通訳者の英語（黒子の黒子）

翻訳業界2016/09/09通訳者の英語（黒子の黒子）

★毎週金曜日更新★
翻訳にまつわる各職種担当者からのミニコラム第14弾！！
今回は少し視点を変えて、「通訳」について、営業担当者にご執筆いただきました！

通訳者の話す英語がとても好きだ。もちろん彼らは最低でもバイリンガルだが、通訳者が英語圏で暮らしたことや勉強した経験がないにもかかわらず、スピーカーの話す内容を瞬時に無駄なく、日本語的だが聞き取りやすい英語で通訳するのを聞いた時はとても嬉しくなる。まさに職人。入社当初の営業研修の際、初めての通訳案件にベテランの先輩に同行させていただいた時にとてもワクワクしたのを覚えている。お客様担当者と通訳者の本番前のすり合わせ後、おもむろに先輩は席を外され控室から出て行った。本番前は通訳者もかなり緊張するため、あえてそっとしておくとの配慮からだった。「なるほどー」と感心した。このアドバイスは今も私自身の通訳者への接し方にものすごく役に立っている。これを教わってなかったら本番直前までそばにいて、いらぬ気を使って逆に迷惑をかけていただろう。通訳案件時の営業担当としての役割はただ可能な限りスムースに、問題なく通訳が出来るように事前準備をすることである。いち早くクライアントから資料を入手し、少しでも早く通訳者に渡すことはとても大事な準備の一つだ。
大きな企業の社内会議などでは、各部署からの資料を取りまとめるのも大変なようで、その際は当然通訳者への提供もギリギリになる。資料入手も通訳前日の夜だとか、最終版は当日現地でということもそれほどに珍しくはない。前日の夜に最終版が届いたときなどはバイク便に訳者のご自宅まで資料を託す。
また通常の事前準備の他に注意している点として、通訳する当人でないと気付けない細かな点の確認を先回りして対応することである。訳者の座る位置からの見え方、スピーカーの話の区切り方、スピーカーへの要望等。
ただ、通訳者ご自身も遠慮されているのか、はなから期待していないからなのか、事前、当日共にあまり要求されることは多くなく、現場の環境に特に文句も言わずに仕事に取り掛かられる。きっと私が気付けないまま、「今回も問題なく終わった」と勝手に思っていることも多いかもしれない。おせっかいになり過ぎずに、よい加減の配慮ができるかが今後も私の課題である。ただ、通訳者が書かれた様々な本によると、通訳者は現場で必ずしも丁寧に扱われないことも多いらしく、先方が意図しないままそのような状態になってしまわないよう、営業担当としては先方の状況も考慮しながら、必要に応じて掛け合う準備は常にしていないといけないと思う。プロの通訳の方々にはそんな気遣いは無用と感じさせられるほど淡々と滞りなく仕事をされ、終わると余計な話しはせずにささっと帰られる。プロなので当たり前といえば当たり前だが、必ずしも目立ち過ぎることはないのに、自分のいる場所でとても重要な役割を果たす。

通訳だけでなく、翻訳も然り。自分の体ひとつでお金を稼ぐ人はどんな仕事であれとても魅力的だ。

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