「実務翻訳家」という職業
「実務翻訳家」というお仕事を聞いたことはありますか?
「翻訳」というと、出版翻訳や映像翻訳(字幕翻訳)を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、出版・映像翻訳も含めた翻訳需要全体の約80%以上が「実務翻訳」や「産業翻訳」と呼ばれるものなのです。
実務翻訳で扱う文書は、官公庁や各種団体、企業の業務にかかわるもの全般です。そのため、文書の種類や分野も非常に多岐に渡っています。
また、グローバル化にともない、実務翻訳の翻訳需要は飛躍的に増加しています。
2022年に発行された日本翻訳連盟の『翻訳白書』によると、約40%の翻訳家が年収400万円以上という調査結果となっています。
翻訳は在宅で行うため、住んでいるところや年齢にかかわらずお仕事ができ、専業・副業としてさまざまな方がそれぞれのスタイルでお仕事をしています。
英語が好きで、英語を使ったお仕事をしたいという方にはおススメの職業です。
実務翻訳の主な分野と文書の種類
実務翻訳家になるには
実務翻訳家になるには、翻訳会社のトライアルテストに合格し、翻訳者登録をするのが一般的な方法です。また、当センターのように、翻訳会社が運営している翻訳スクールで学習し、一定の基準をクリアして翻訳者登録をする方法もあります。
実務翻訳を行うには、語学力や翻訳技術以外に、対象とする分野の専門知識が必要となるため、実務翻訳家の多くは自分の専門分野持ち、その分野をベースにお仕事をしています。
もともと持っている専門分野を生かして翻訳をしている方、翻訳学習と並行して専門分野の知識も身につけてお仕事をしている方など、さまざまな方がいらっしゃいます。
プロの翻訳にチャレンジ!!
以下の文を翻訳してみましょう。
文法も単語も中学校レベルのものですね。それでは早速確認してみましょう。
「日本の総理大臣の岸田文雄と大統領のジョー・バイデンは、木曜日に電話会談を開いた。」
「日本の総理大臣の岸田文雄と大統領のジョー・バイデンは、木曜日に電話会談を開いた。」
これで100点ですね。
「Japanese」も「Prime Minister」もしっかり訳されていますし、「held」も「開いた」と訳されています。
英語の先生は100点をくれるでしょう。
「President Barack Obama」を「大統領のジョー・バイデン」とするのか、
「ジョー・バイデン大統領」とするのかについて、学校英語の場合先生は特に気にしないでしょう。
以上は、学校の英語のテストでのお話。。。
・・・実は、実務翻訳というビジネスに関する翻訳の場合は、少し事情が異なります。
まずは完成文から。
「岸田総理は木曜日、バイデン米大統領と電話で会談した。」
学校英語と比べて、とてもスッキリしていることが分かりますでしょうか。
簡単な解説
ここでは、(和訳する時点で)読み手が日本人であることを意識して、「日本の」を割愛しています。また、「電話会談を開いた」を「電話で会談した」と訳していますが、学校英語では「hold(held)」の意味を覚えてほしいので「開いた」が「正解」とされるのに対して、実務翻訳では「会談」を動詞にしてしまっても「不正解」ではありません。
さらに、「米大統領」のように一般的に使用されている用語を使った点も実務翻訳の特徴のひとつです。
最後に、実務翻訳のポイントを3つご紹介します。
①文章の読み手と目的にあった文体・表現がある
②一度読めば理解できる文章にする
③誤解のない文章にする──解釈は1つだけ
同じ英語⇔日本語でも、なかなか奥が深いと思いませんか?
翻訳家という仕事は、これからますます需要が高まりますし、時間や場所、さらには年齢にもとらわれない職業として英語好きの方々に人気があるのです。
最近では機械翻訳の精度の高まりを受けて、翻訳家が機械翻訳を活用してより効率よく翻訳作業を行えるようになってきています。
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